Mario Ruiz Armengolのピアノ曲リスト
マリオ・ルイス・アルメンゴルの楽譜には作曲年月日が記されているものが多く、それなどを参考にだいたい作曲順にリストアップしました。
曲 名 作曲年/月/日 Siete ejercicios de composición
y armonía para piano
ピアノのための作曲と和声の7つの練習
No. 1, Moderato 1948 No. 2, Allegretto grazioso No. 3, Allegro grazioso No. 4, Maestoso No. 5, Moderato No. 6, Lento No. 7, Moderato Preludio para piano ó arpa ピアノまたはハープのための前奏曲 1953 Las frias montañas 寒い山々 1964 Sonata ソナタ I, Moderato - Allegro 1971 II, Lento lamentoso III, Presto 16 Estudios para piano
ピアノのための16の練習曲集No. 1, Introducción y estudio sobre el acorde de séptima
七度の和音による序奏と練習曲1972 No. 2, Estudio alegre 楽しい練習曲 No. 3 No. 4 1988/05/ No. 5 1990/03/ No. 6 1990/11/ No. 7 1992/10/ No. 8 No. 9, Estudio breve 短い練習曲 1996/01/12 No. 10 1994/04/ No. 11 1995/05/19 No. 12 1995/09/23 No. 13, Estudio elemental 初歩の練習曲 1995/10/15 No. 14 1995/11/19 No. 15 1996/01/ No. 16, Brevísimo estudio ごく短い練習曲 1999/01/22 Nocturno a Ponce ポンセへの夜想曲 1979 Provinciana 田舎っぽく 1979 Preludio triste y consecuencias 悲しい前奏曲と帰結 1979 Danzas Cubanas
ダンサ・クバーナ集(キューバ舞曲集)No. 1, Recordando a papá 父の想い出 1979/08/ No. 2, En el café カフェで No. 3, Serenata melancólica 憂鬱なセレナーデ 1983/03/ No. 4, Viejos recuerdos 古い思い出 1983/06/ No. 5, Lamento criollo クリオージョの嘆き 1983/05/ No. 6, Ayer y hoy 昨日と今日 1983/06/ No. 7, La siete 第7番 1983/07/ No. 8, Los días felices 幸せな日々 1983/09/ No. 9, Canta, clave, canta 歌え、クラーベ、歌え 1984/08/ No. 10, Fantasiosa 幻想曲 1984/08/ No. 11, Pequeña, alegre y bonita (tema y variación - estudio)
ちっちゃく、陽気で、可愛い(主題と変奏 - 練習曲)1987/04/ No. 12, ¡Gracias a Dios! よかった! 1985/09/ No. 13, Triste amor 悲しい愛 1987/04/ No. 14, Exótica エキゾチック 1987/07/ No. 15, Baila tristeza 悲しい踊り 1988/02/ No. 16, Esencia 本質 1988/10/ No. 17, Ritmonia リトゥモニア 1989/01/ No. 18, La dieciocho 第18番 1990/04/16 No. 19, ¡Si y no! さもなくば 1991/01/19 No. 20, atonal 無調 2001/05/04 No. 21, atonal 無調 2001/07/21 No. 22, atonal 無調 2001/10/05 Al final del camino 道の果てに 1981/11/ Un vals 一つのワルツ 1982 23 piezas infantiles, libro 1
23の子どもの小品集、第1巻No. 1, Gina ジーナ No. 2, Nubecillas II 小さな雲 II 1984/08 No. 3, Nubecillas I 小さな雲 I 1984/08 No. 4, Buenos días おはよう 1984/10 No. 5, Claudia クラウディア No. 6, Minueto メヌエット No. 7, Cristy クリスティ No. 8, La danza de las negritas 黒人の少女たちの踊り 1984/10 No. 9, Mis amigas las negritas 私の友達の黒人の少女たち 1984/10 No. 10, Sextas alegres 楽しい六度 No. 11, Rosas y jazmines バラとジャスミン No. 12, Polichinela 道化役 No. 13, El espanto espantado 怯えたお化け No. 14, El joropo ホローポ 1982/05/03 No. 15, Sextas tristes 悲しい六度 No. 16, Little jazz 小さなジャズ No. 17, More jazz もう一つジャズ No. 18, Emociones 感情 No. 19, Juegos de antaño 昔の遊び No. 20, Aquellos días あの日々 1984/12/ No. 21, La chinita de Hong Kong 香港の中国の少女 No. 22, Dos corazones 2つの心 1984/12/ No. 23, El el jardín お庭で Continuacion progresiva
de las piezas infantiles, libro 2
子どもの小品集の進歩的継続、第2巻No. 1, Danae ダナエ No. 2, Simplemente adiós シンプルに、さよなら No. 3, En Coatepec コアテペックにて No. 4, Quintas 五度 No. 5, Una y ya (Danza cubana) 1984/08/ No. 6, Rocío 露 No. 7, Viejo vals 古いワルツ No. 8, Andante cantabile アンダンテ・カンタービレ No. 9, Debussyana ドビュッシー風に No. 10, Un tierno amor 優しい愛 No. 11, Pequeño estudio 小さな練習曲 No. 12, A mi Verecruz 私のベラクルス No. 13, Quasi mazurca マズルカのように No. 14, Sonatina ソナチネ 1985/05/ Minueto メヌエット 1983/05/ Scherzo スケルツォ 1984/06/16 Soliloquio 独白 1985/03/ Otro vals もう一つのワルツ 1985 Corolario 必然的帰結 1988/01/ Reflexiones
(16 piezas para piano)
レフレシオネス(ピアノのための16の作品)No. 1, 第1番 1988/11/ No. 2, Mágico 魔法 1989/03/ No. 3, Reminiscencia 追憶 1989/11/ No. 4, Jardín de música 音楽の庭 1990/07/ No. 5, Un azul amanecer 青い夜明け 1991/06/01 No. 6, Destellos de luna 月の煌めき 1991/07/21 No. 7, Sentimental センチメンタル 1993/07/ No. 8, Vespertina 夕暮れ 1993/11/ No. 9, Emotiva 感情的 1994/03/07 No. 10, Romántica ロマンチックな 1994/06/13 No. 11, Poética 詩的な 1994/11/13 No. 12, Preludio a un ocaso 落日へのプレリュード 1993/11/ No. 13, Fragancias 芳香 1995/05/ No. 14, Nubes de colores 色のある雲 1995/07/03 No. 15, Ecos de la montaña 山のこだま 1996/02/20 No. 16, Remembranzas 思い出 1996/04/16 Vals impromptu 即興的なワルツ 1990/06/ Capricho カプリーチョ 1990/07/29 Aires antiguos 古い民謡 1993/03/ Miniaturas
ミニアチュール集No. 1, Preludio a un preludio 前奏曲への前奏曲 1993/12/ No. 2, Un suspiro ため息 1993/12/ No. 3, Invernal 冬の 1993/12/ No. 4, Extraño vals 奇妙なワルツ 1994/01/25 No. 5, Pensamiento 思考 No. 6, Cristalina 透明な 1995/07/26 No. 7, Amorosa 愛情深い 1995/08/02 No. 8, Funeral 葬式 1995/09/ No. 9, Minifantasía 小さな幻想曲 1995/10/08 No. 10, Aquarius アクアリウス 1996/02/13 No. 11, Miniestudio 小さな練習曲 No. 12, Campirana カンピラーナ 1996/02/27 No. 13, En el viejo campanario 古い鐘楼で 1996/04/12 No. 14, Estudio intrascendente 取るに足りない練習曲 1996/04/25 No. 15 1997/01/13 No. 16, Estudio 練習曲 1996/05/27 No. 17, Tierno vals 優しいワルツ 1996/07/19 No. 18, Temas a colores 色への主題 1996/07/22 No. 19, Estudio 練習曲 1996/08/01 No. 20, Fantasía mínima 最小の幻想曲 1996/09/12 No. 21, Estudio armónico 和声的な練習曲 1996/09/10 No. 22, Ejercicio bitonal 多調の練習 1996/09/30 No. 23, Impetu 勢い 1996/10/11 No. 24, Súbito 突然に 1996/10/18 No. 25, Metamorfosis 変貌 1996/11/06 No. 26, Pasatiempo 気晴らし 1996/11/12 No. 27, Miniminiatura 小さなミニアチュール 1996/11/15 No. 28 1996/12/13 No. 29 1997/02/04 No. 30 1997/02/20 No. 31 1997/03/03 No. 32 1997/03/12 No. 33 1997/07/19 No. 34 No. 35 No. 36 1997/09/09 No. 37 1997/10/05 No. 38 No. 39 No. 40 1997/11/06 No. 41 No. 42 1998/01/06 No. 43 1998/01/14 No. 44 1998/01/28 No. 45 No. 46 1998/02/16 No. 47 1998/07/09 No. 48 1998/07/27 No. 49 1998/08/29 No. 50 1998/09/21 No. 51 1998/09/20 No. 52 1998/09/27 No. 53 1998/10/05 No. 54 1998/10/08 No. 55 1998/10/19 No. 56 1998/10/29 No. 57 1998/11/14 No. 58 1998/11/22 No. 59 1998/12/11 No. 60 1998/12/18 No. 61 1999/01/25 No. 62 1999/02/04 No. 63 1999/02/20 No. 64 1999/03/02 No. 65 1999/03/13 No. 66 1999/03/24 No. 67 1999/04/13 No. 68 1999/04/23 No. 69 1999/05/02 No. 70 1999/06/09 No. 71 1999/05/25 No. 72 No. 73 1999/07/29 No. 74 1999/08/21 No. 75 1999/09/05 No. 76 No. 77 No. 78 No. 79 No. 80 No. 81 No. 82 No. 83 No. 84 No. 85 No. 86 No. 87 No. 88 No. 89 No. 90 No. 91 No. 92 No. 93 No. 94 No. 95 Metáforas メタファー集 No. 1 1997/04/28 No. 2, Plus ultra No. 3 1997/06/02 No. 4 No. 5 No. 6 1998/03/12 No. 7 1998/04/23 No. 8 No. 9 1998/06/21 No. 10 1998/08/18 No. 11 Pasional 情熱的な 1999/02/16 Esperame en el cielo 私を天国で待って 2001/01/11 Mazurca マズルカ Crepuscular (para piano a cuatro manos) たそがれ(ピアノ連弾) De ti, de mí (para piano a cuatro manos) あなたから、私から(ピアノ連弾) Danza española (para piano a cuatro manos) スペイン舞曲(ピアノ連弾)
Mario Ruiz Armengolのピアノ曲の解説
1948
- Siete ejercicios de composición y armonía para piano ピアノのための作曲と和声の7つの練習
1948年初版で、ルイス・アルメンゴルの“クラシック作曲家”として初の作品である。当時ルイス・アルメンゴルが師事していたロドルフォ・アルフテル Rodolfo Halffter の影響を受けたような、彼にとっての「作曲と和声の7つの練習」なのだろう。それぞれは1〜2分の短い7つの小品から成り、1〜6番はA-A-B-A'-B-A'-コーダの形式、7番のみA-A-B-B形式で、全体的に地味な印象の組曲であるが、半音階進行を使った絶妙な和声や多調などルイス・アルメンゴルの作曲技法の熟成が既に見られていて、これらの技法が後年の《Danzas Cubanas》や《Reflexiones》といった名作へと繋がっていくのを予感させる興味深い作品である。第1番Moderatoはニ短調。物悲しい旋律の下で、内声の半音階下降が聴かれる。第2番Allegretto graziosoはハ長調。気取ったワルツで、Gm7、Fm7などの和音進行がお洒落。第3番Allegro graziosoはト長調。溌剌としたポルカ。第4番Maestosoは変ロ短調。両手和音連打が派手な曲。第5番Moderatoは一応ハ長調。冒頭の左手はハ長調だが、右手はホ長調?と多調である。第6番Lentoは変ホ長調。甘い雰囲気の曲で、この曲も右手はニ長調っぽく多調である。第7番Moderatoはハ長調。優しく語りかけるような曲。1953
- Preludio para piano ó arpa ピアノまたはハープのための前奏曲
ホ長調。ドビュッシーの初期のピアノ曲の影響を強く受けたような、ともかく甘い夢を見ているような美しい和声の曲。全曲ほとんど、まるで絹織物のような繊細なアルペジオからなり、ハープで弾いてもピッタリくる曲である。ちなみにこの曲を作った頃、ルイス・アルメンゴルはメキシコのハープ奏者Carmen Rosellóと恋に落ちていたらしい。1964
- Las frias montañas 寒い山々
唯一、ルイス・アルメンゴルのピアノ曲が一流出版社 (メキシコのEdiciones Mexicanas de Música) から出た曲。ルイス・アルメンゴルが愛人のNancy Rothmanと米国北東部のタコマを訪れた際、その南東に聳えるレーニエ山の印象を曲にしたらしい。ト短調、A-B-A'形式。厳寒の山の厳しさが伝わってくるような、しかし絶妙な和声進行が切ない雰囲気を醸し出すロマンティックな曲。Bは一時ト長調になる。1971
- Sonata ソナタ
ルイス・アルメンゴル唯一のピアノソナタ。定まった調性も聴かれず和声的には複雑で、印象主義や新古典主義の響きなどが混じり彼の作曲技法の高さを感じさせるが、不協和音の美しさはアルメンゴルらしい。第1楽章は2小節のModeratoのモチーフに続いて、Allegroのせわしない第1主題が現れる。毎拍のように移り変わる和声進行は目の眩むような感じだ。ffまでひとしきり盛り上がってからpで4分音符ラ♭-レ♭-ファ-ラ-ドという謎めいた第2主題が奏される。2オクターブのユニゾンの音形などが現れる所など神秘的な響きだ。展開部もドビュッシーかスクリャービンかというような響きが続く。第2楽章Lento lamentosoはA-B-A'形式。アルメンゴルらしい柔らかい不協和音にのって、子守歌のような穏やかな旋律が奏される。第3楽章PrestoはA-A-B-A'-B-A'形式。トッカータ風の僅か1分半の曲で、半音階の和音進行や多調が面白い響き。
- Moderato - Allegro
- Lento lamentoso
- Presto
1972-1999
- 16 Estudios para piano ピアノのための16の練習曲集
ピアノの技巧的には大部分がショパンの練習曲集から取ってきた感じだが、一方で旋律と和声はルイス・アルメンゴルらしい独自の世界で、何とも珍しい練習曲集である。全16曲から成り、第1番以外は速い16分音符が殆ど休みなく現れ、技巧的に結構難しく上級者向け。彼らしい美しい旋律や和声が所々現れ、いい曲もいくつかある。
- No. 1, Introducción y estudio sobre el acorde de séptima 七度の和音による序奏と練習曲
ゆっくりした部分と3連符の急速な部分が交互に現れる曲。目まぐるしく変わる和声進行が魔法的な響きで、いかにもルイス・アルメンゴルらしい曲。- No. 2, Estudio alegre 楽しい練習曲
ニ長調、A-B-A-コーダの形式。16分音符のアルペジオや分散和音、音階の練習曲。川の流れのようで、また生き生きとした雰囲気だ。Bは落ち着いた雰囲気に変わり、シンコペーションの旋律がポピュラー曲を思わせる。- No. 3
変ロ短調、A-B-A-コーダの形式。3〜4小節目の8分音符はショパンの練習曲集 作品25-4を、続く5〜8小節目の右手〜左手と受け継がれる16分音符は同 作品10-4を思わせるピアニスティックな曲。Bは楽譜にlento poco rubatoと記されていて、テンポを落としてやや瞑想的な旋律が奏される。- No. 4
ハ長調、A-B-A-コーダの形式。右手16分音符が忙しなく無窮動で続く。頻繁な転調が色彩的だ。Bは変ニ長調になり、ゆったりしたテンポで穏やかな旋律が奏される。- No. 5
ロ長調、A-B-A'-コーダの形式。明るい雰囲気の無窮動な曲でポリフォニック。- No. 6
ハ長調、A-B-A形式。広い音域の右手のアルペジオの曲。ショパンの練習曲集 作品10-1をやや思わせるが、醒めた雰囲気の独特の和声がルイス・アルメンゴル的。- No. 7
ハ短調。思いっきりショパンの練習曲集 作品10-12「革命」風。但し中間部の展開の和音はやはりルイス・アルメンゴル的。- No. 8
変イ長調。転調が度々でドラマチック。中間部は甘くロマンチック。- No. 9, Estudio breve 短い練習曲
イ短調、A-B-A'形式。ギターの響きを思わせる下行アルペジオにのって陰うつな旋律が奏される。Bはヘ長調になり、楽譜にtpo. di barcarolaと記されている通り、舟歌風の旋律が夢見るように奏される。- No. 10
ハ短調。16分音符の旋律と、半音階進行の対旋律やアルペジオがあちこちに現れる。- No. 11
嬰ハ短調。やや神秘的な和音の曲。- No. 12
- No. 13, Estudio elemental 初歩の練習曲
ニ長調、A-A-B形式。それほど速く弾く訳でなければ「初歩の練習曲」と言っていい右手の16分音符の曲。- No. 14
ロ短調、A-B-A'-コーダの形式。ひたすらオクターブの練習曲。- No. 15
一応ハ長調。両手によるアルペジオの曲で、和音はやはり難解。- No. 16, Brevísimo estudio ごく短い練習曲
変イ長調。アルメンゴル的和音の30秒弱のごく短い曲。1979
- Nocturno a Ponce ポンセへの夜想曲
変ロ短調、A-A-A'形式。メキシコを代表する先輩作曲家マヌエル・ポンセへのオマージュなのだろう。時々ため息をつくようなリタルダンドが入る、何とも悲しげな雰囲気の曲。A'は悲しみが思い詰めて、激情的になったように奏される。- Provinciana 田舎っぽく
ニ長調、A-B-A'形式。語りかけるような優しい旋律の曲。- Preludio triste y consecuencias 悲しい前奏曲と帰結
嬰ハ短調。PreludioはA-A-A'形式。右手に寂しげな旋律が静かに奏され、左手内声に半音階進行の対旋律が纏わり魔法的な雰囲気。consecuenciasはA-A-B-コーダの形式。ワルツのリズムになるが、陰うつな雰囲気が続く。1979-2001
- Danzas Cubanas ダンサ・クバーナ集(キューバ舞曲集)
ダンサ・クバーナ集は、ルイス・アルメンゴルのピアノ曲を代表する名作である。"Danzas Cubanas" を直訳すれば「キューバ舞曲集」となるが、ここでのDanzaとは、キューバの民族舞曲「コントラダンサ contradanza」が略されて「ダンサ danza」となったのが由来である。全22曲から成り、各曲は一分半から四分位の小品から成る。メキシコやキューバ音楽の様式を題材に、また現代的なジャズの味付けも加え、アルメンゴル独特の美しい旋律や和声の詰まった世界を築いている。何より聴いていて楽しく、そしてちょっぴり切なくて、もう何と言ったらいいか?最高です!
- Recordando a papá 父の想い出
この第1番を書いた時、ルイス・アルメンゴルは "Danzas Cubanas" として作曲している意識はなかった。が、ルイス・アルメンゴルが "Recordando a papá" と題したこの曲をキューバ出身の作曲家・ピアニスト、レネ・トゥーゼ René Touzet に弾いて聴かせた時、レネ・トゥーゼが「これはDanza Cubana以外の何物でもないよ」と言ったことから、この曲はダンサ・クバーナ集(キューバ舞曲集)の第1番となった。イ短調、A-B-A形式。冒頭の感傷的なイ短調のAの部分と、中間部の南国的な明るいイ長調のBの部分のコントラストは「ダンサ・クバーナ」の伝統ー則ち対照的なAとBから成るコントラダンサの形式を思わせるが、それにAの回想を加えて三部形式とした所に、(踊りの伴奏音楽ではなく)演奏会用作品としての確立が窺われる。リズムのノリはいいが、冒頭の旋律は切なく、長調となるBも何とも言われぬ郷愁が漂う素敵な曲です。- En el café カフェで
ルイス・アルメンゴルの娘の話では、この曲は彼が行きつけであったメキシコシティの「カフェ・サン・ホセ」での情景を描いた曲であろうとのこと。ト長調、A-B-A形式。明るく、ほのぼのとしたカフェでの会話が聞こえてくるような楽しい曲。Bはニ長調になる。- Serenata melancólica 憂鬱なセレナーデ
レネ・トゥーゼに献呈。ハ短調、A-B形式。ともかく切ない旋律が綿々と歌われる曲。Bの部分では情熱的に旋律が盛り上がった末に、しぼんでいくのが悲しい。- Viejos recuerdos 古い思い出
ヘ長調、A-B-C-A'形式。昔の楽しかったことを思い出すと、今も心が浮き浮きするような、そんな感じのダンソンのリズムにのった南国的な曲。Bはイ短調で哀愁を帯びた響きーと思ったら突然、視界が開けたように明るいCのイ長調の響きになるのが何とも鮮やかで粋である。- Lamento criollo クリオージョの嘆き
ト短調、A-B-A'-コーダの形式。悲しい旋律の曲。Bはニ短調で甘い旋律。- Ayer y hoy 昨日と今日
キューバ出身のピアニスト、イレアナ・バウティスタに献呈。ニ長調。この曲以前のルイス・アルメンゴルのダンサ・クバーナ1〜5番は、曲の構成が伝統的な「コントラダンサ」のA-Bまたは、それに繰り返しのAを加えた三部形式A-B-Aであった。が、この第6番は強いて言えばA-B-A'形式だが、BはAの展開部のような感じで、嬰ヘ長調〜ホ長調〜ニ長調〜ロ長調〜と目まぐるしい転調や、ジャズを思わせる和音の平行移動など、和声的にも斬新で刺激的な響きだ。ダンサ・クバーナの作風の進化という点からも興味深い作品である。爽やかな朝、燦々と太陽の光が差し込むような光景を描いたような生気に満ち満ちた曲。- La siete 第7番
ハ長調、A-B-A'-B-C-B-A形式。アップテンポの元気な曲。冒頭Aの速いシンコペーションは生き生きしているし、Bでは左手トレシージョのリズムにのって、右手16分音符の旋律が華やかに駆け回る。Cは突然変ホ長調に転調し、今までの跳ねるようなリズムから一転して、高音部で静かに煌めくような16分音符の旋律がまたとってもお洒落!。- Los dias felices 幸せな日々
ホ長調、A-B-A形式。しっとりとした旋律で始まる。幸福な家庭の光景のように私には思えます。Bはト長調になる。- Canta, clave, canta 歌え、クラーベ、歌え
"clave" とは、2本の木の棒を打ち合わせる楽器(2本対なのでクラベス, claves)、またはクラベスで鳴らす特有のリズム(キューバではソン・クラーベと呼ばれる)を指している。ト短調、序奏-A-A'-A-A'-後奏の形式。序奏は右手高音部レ音でソン・クラーベのリズムが鳴り、謎めいたリズムパターンが繰り返される。ソン・クラーベのリズムや、シンコペーションの執拗な繰り返しはアフロキューバ音楽を思わせる。続くAはシンコペーションと16分音符に乗って悲しい旋律が歌われる。- Fantasiosa 幻想曲
ダンサ・クバーナらしいハバネラやトレシージョのリズムと、ジャズの語法が絶妙に混ざった斬新な作品。変ホ長調、A-B-A-コーダ形式。序奏の和音はE♭6やE♭M9などジャズ風。Aは粋なシンコペーションにのってどんどん転調していく。Bで度々現れる突然の転調も、まるで新しい地平線が現れるようで絶妙。- Pequeña, alegre y bonita (tema y variación - estudio) ちっちゃく、陽気で、可愛い(主題と変奏 - 練習曲)
ルイス・アルメンゴルの友人であるピアニストのアレハンドロ・コロナの娘クラウディア・コロナ (1976-) の11歳の誕生日に献呈。ハ長調、A-B-A'-B'-コーダ形式。無邪気な子供を描写したような軽妙でおどけた楽しい曲。冒頭Aの旋律から、転ぶような3連16分音符混じりの旋律が愛嬌たっぷり。Bはイ短調の部分も可愛らしい。A'とB'は変奏曲風で所々、突然速い32分音符が現れるのがハチャメチャな感じで、それがまた面白い。- ¡Gracias a Dios! よかった!
1985年9月19日にメキシコで発生した地震では約一万人の犠牲者が出て、首都メキシコシティの被害も大きかった。この地震でルイス・アルメンゴルは自分や家族の命が無事だった事を神に感謝して、この曲を作ったらしい。クラウディア・コロナの母、パトゥリシア・カスティージョ・デ・コロナに献呈。A-B-A-コーダの形式。生き生きしたテンポにのった、リズムも和声もとてもお洒落な曲。Aは全体的にはト長調と言えるが、冒頭はC#m7〜Bm7〜Am7と短七の和音が続いて調性がはっきりしない辺りや、Bの部分も目まぐるしく変わる転調が何とも色彩的。- Triste amor 悲しい愛
クラウディア・コロナに献呈。この曲あたりからダンサ・クバーナは内省的な曲が多くなっていく。ト短調、A-B形式。旋律のリズムはキューバ舞曲らしいトレシージョやシンキージョだが、曲想は何とも悲しく、寂しい曲。Bは部分は嘆くような旋律が奏される。- Exótica エキゾチック
ピアニストのアレハンドロ・コロナに献呈。A-B形式。ダンサ・クバーナ12番〈¡Gracias a Dios!〉でも調性感をぼかしたような和音進行が見られていたが、この曲の前半Aの部分では冒頭の多調の響きや、属七・減七の和音の平行移動など難解な和声の作り。後半Bははハ長調になり、ダンサ・クバーナらしい盛り上がりとなる。AとBの和音の使い方があまりにも異なるので、聴いていて???といった感じです。- Baila tristeza 悲しい踊り
ニ短調、A-A形式。2分弱の短い曲。8小節の前奏に続き、しみじみとした切ない旋律が奏される。特に17小節目からの三度重音の旋律が泣かせる。- Esencia 本質
ドビュッシーに献呈。A-B-A'形式。冒頭は完全四度の堆積の和音が半音階的平行移動し、ドビュッシーを思わせる響きである。リズムはとってもラテン的。- Ritmonia リトゥモニア
"Ritmonia" を辞書で引いても載ってない。スペイン語のritmo(=リズム)とarmonía(=和声)を繋げた造語と思われる。ト短調、A-B-A'形式。短七長九和音のGm7とCm7の繰り返しの序奏がクールな響きで、それにのって気取った旋律が奏される。その後も七度や九度和音の平行移動が多用され、モダンジャズ風の落ち着いた曲。- La dieciocho 第18番
ヘ短調、A-A-B-A'形式。ダンサ・クバーナ(キューバ舞曲)=熱帯の島の熱い音楽〜のイメージを覆すような、何とも寒々としたような曲で、私個人的には、雨が静かにしとしと降るような雰囲気を連想させる美しい曲です。沈みこんでいくような4小節の序奏に続き、旋律が始まる。右手旋律はシンキージョ、左手ベースはトレシージョのリズムだが、5小節単位でフレーズが現れるのが何かため息をついているような、感傷的な雰囲気たっぷりである。Bはハ長調になり、やや明るくテンポアップする。A'の最後の終わり方がもとってもお洒落。- ¡Si y no! さもなくば
ハ短調。落ち着いた曲。- atonal 無調
- atonal 無調
- atonal 無調
この3曲は2001年の作曲で楽譜は未出版。 リズムは以前のダンサ・クバーナを踏襲していて、第3番や第17番の旋律に似たフレーズなども現れる。しかし和声は晩年のルイス・アルメンゴルの趣味を反映して、調性は殆ど感じられない作品となっている。1981
1982
- Un vals 一つのワルツ
ホ短調、A-B-A-コーダ形式。ゆったりとしたワルツで、旋律は甘く切なく、ルイス・アルメンゴルらしいお洒落な和音が美しい曲。Bは高音部で奏される三度重音の旋律が星が煌めくようで美しく、またその後はドラマチックな転調が続く。コーダの部分はト長調になり、急に明るく速くなる所がちょっと?。1982-1984?
- 23 piezas infantiles, libro 1 23の子どもの小品集、第1巻
23曲から成る小品集で、楽譜はピアノの初心者を意識して運指が細かく記されている。最初はバイエル中級程度のレベルで始まり、第11番までは音程は七度まででオクターブは現れず、後半はツェルニー30番程度。ルイス・アルメンゴルの作品らしく、おおむねテクニックよりも表現力を養うのに相応しい、親しみやすい曲集だ。
- Gina ジーナ
ハ長調、A-B-A'形式。子どもが気取ったような旋律の曲。Bでは旋律が右手から左手に移る。- Nubecillas II 小さな雲 II
ヘ長調、A-A-B-B-A形式。小さな雲が気持ちよく流れるような感じの曲。Bは一時イ短調になる。- Nubecillas I 小さな雲 I
ニ短調、A-A'-B-B'-A-A'形式。メヌエット風の曲。Bは、Aの旋律・伴奏をそのままニ長調にしている。- Buenos días おはよう
ハ長調、A-A形式。朝らしい、伸びやかな旋律が奏される。- Claudia クラウディア
ニ長調。二声で書かれていて、右手旋律を2拍後から左手がカノンになって追う。- Minueto メヌエット
ヘ長調、A-A'-B-A-A'形式。お澄ましして歩いているような感じのメヌエット。- Cristy クリスティ
変ロ長調、A-A'-A"形式。内声の半音階進行がちょっと大人びている。- La danza de las negritas 黒人の少女たちの踊り
変ト長調、A-A-B-B-A-A-コーダの形式。旋律が一部で五音音階になって、むしろ中国風の響き?。- Mis amigas las negritas 私の友達の黒人の少女たち
変ト長調、A-B-A-コーダの形式。メヌエット風の可愛らしい曲。- Sextas alegres 楽しい六度
ト長調、A-A'-B-B-A-A'形式。題名通り、右手の旋律が六度重音の戯けた曲。- Rosas y jazmines バラとジャスミン
変ホ長調、A-B形式。可憐な旋律が静かに奏されるが、対旋律に時々現れるレ♭の音が曲に翳りを落としているような雰囲気。- Polichinela 道化役
一応ハ長調、A-A-B-A'形式。臨時記号が多く、右手長三和音がD♭→C→Bと半音階で下がったり、多調になったりと和声的に凝った曲だ。- El espanto espantado 怯えたお化け
一応ヘ短調、前奏-A-A形式。前奏は増三和音が鳴る下で、全音音階が下がる面白い響き。その後現れる両手ユニゾンの旋律は、ちょっと頼りないお化けのようで滑稽だ。前打音や両手トリルも現れ、最後は両手オクターブの跳躍がありちょっと難しい。- El joropo ホローポ
joropoとはベネスエラやコロンビアの民族舞踊の一つ。ニ長調、前奏-A-A形式。前奏はホローポのリズムが半音階和声進行で奏される。引き続き、滑らかな旋律が右手に奏される。- Sextas tristes 悲しい六度
変イ長調、A-A-コーダの形式。穏やかな左手アルペジオの伴奏にのって、右手の旋律が六度重音で奏される。オクターブの響きが力の象徴なら、六度の響きは優しさかな〜、と思わせるような曲です。- Little jazz 小さなジャズ
ハ長調。楽譜にTiempo de Bluesと記されており、スウィングして弾くのが正しいであろう。旋律にはミ♭、ファ#、シ♭が現れるブルー・ノート・スケールの曲。- More jazz もう一つジャズ
ハ長調。この曲もブルー・ノート・スケールで、和音もベース進行もちょっと生意気で楽しい。- Emociones 感情
一応ハ短調、A-A-B-A'形式。半音階進行や多調を用いた不協和音の多い曲。- Juegos de antaño 昔の遊び
ヘ長調、前奏-A-B-C-A-コーダの形式。ヘ長調とニ短調を彷徨うような和音進行にのって、5拍子のリズムの旋律が穏やかに奏されるのが何とも郷愁が漂う。- Aquellos días あの日々
ニ長調、A-B-A'形式。穏やかに昔話をしているような旋律の曲。- La chinita de Hong Kong 香港の中国の少女
ホ長調、A-B-A形式。四声で書かれている。可憐な旋律の下で、内声やバスの音階進行を上手く用いた和声が、何とも心暖まるような雰囲気を醸し出している美しい調べの曲。この曲のどこが香港なのだかは分かりません。- Dos corazones 2つの心
変ロ長調、A-A-B-B'-B-B'形式。可憐な旋律の曲。- El el jardín お庭で
ニ長調、A-B-A-コーダの形式。花が咲き、蝶が集まるようなのどかな庭の光景のような曲。Bはニ短調になる。1984?-1985?
- Continuacion progresiva de las piezas infantiles, libro 2 子どもの小品集の進歩的継続、第2巻
前出の第1巻に比べて技巧的にもやや難しいが(ソナチネアルバム位)、技巧以上に、音楽的に艶かしい大人の音楽から成る曲集である。
- Danae ダナエ
ハ長調、A-A-A'形式。元は歌曲でロマンチックな歌。- Simplemente adiós シンプルに、さよなら
ヘ長調、A-A'形式。シンプルな旋律の曲だが、美しい旋律と控えめながら絶妙な対旋律と和音がとても美しい、余韻たっぷりの曲。ルイス・アルメンゴルの数あるピアノ曲の中でも、私個人としてはベスト3に入れたい位大好きです。- En Coatepec コアテペックにて
コアテペックはベラクルズ州中部の小さな村で、極上のコーヒーを産することで知られている。ホ長調、A-A形式。ダンサ・クバーナ風のトレシージョ(♪. ♪. ♪)の伴奏にのって哀愁漂う旋律が奏される。- Quintas 五度
ト長調、A-A-B-A'形式。三声または四声で書かれている曲で、右手・左手ともに完全五度重音を多用している。落ち着いた雰囲気の旋律が流れる。- Una y ya (Danza cubana)
ハ長調、A-B-C-B-C形式。シンコペーションやトレシージョのリズムを用いたダンサ・クバーナで躍動的。Cはイ短調になる。- Rocío 露
ハ短調、A-A-B-B-A-A-コーダの形式。ボサノヴァのリズムにのって旋律が流れるように奏され、お洒落な雰囲気。Bはハ長調になる。- Viejo vals 古いワルツ
変ホ長調、A-B-B-A-コーダの形式。素朴な旋律のワルツ。Bは優雅に舞うような8分音符の旋律になる。- Andante cantabile アンダンテ・カンタービレ
ト長調、A-B-A'形式。後打ちの伴奏にのって旋律がしみじみと歌われる、ルイス・アルメンゴルらしい曲。- Debussyana ドビュッシー風に
ホ長調、A-B-A'-コーダの形式。ルイス・アルメンゴルのピアノ曲は、ドビュッシーの影響を受けているな〜という場所をあちこち見受けるが、この曲は「ドビュッシー風に」とはっきり銘打っている。Aはドビュッシーの初期の作品を思わせる半音階や全音音階和音を多用。Bはアラベスク風。- Un tierno amor 優しい愛
変ロ長調、A-B-A-コーダの形式。優しい穏やかな曲。- Pequeño estudio 小さな練習曲
ト長調、A-B-A'形式。右手16分音符が旋律の曲。- A mi Verecruz 私のベラクルス
ハ長調、A-B-A-コーダの形式。トレシージョやシンキージョのリズムが陽気な歌謡曲風の曲。Bはハ短調になる。- Quasi mazurca マズルカのように
ヘ短調、A-B-A'-C-B-A'形式。やや曲調の変化が少ないマズルカ。- Sonatina ソナチネ
3楽章から成っていて、いずれも1〜2分の短い曲。バロック風のソナチネである。第1楽章はホ長調。ガボットのリズムで上品な雰囲気。第2楽章はイ長調、A-B-A-コーダの形式。6/8拍子で可憐な旋律が静かに奏される。Bはホ長調になる。第3楽章はニ長調、A-A'-A"形式。二声で書かれていて、右手の快活な旋律を所々左手が追うように奏する。1983
1984
- Scherzo スケルツォ
ロ短調、A-B-C-B'-A'-コーダ形式。スケルツォと言ってもゆっくりした部分が多く、また前後部分のシリアスな響きと、中間部のダンサ・クバーナ風の甘い響きが繋げられた作品。冒頭Aは4/4拍子、lentoで、低音シ音オクターブが鳴り響く上に、増五度を多用した和音の旋律が奏されて荘厳な響き。続いてのBは6/8拍子のスケルツォらしい16分音符が情熱的に奏される。その後3/4拍子の経過句を経て、Cの "tempo di danza" と楽譜に記されたハ短調、2/4拍子のハバネラのリズムにのった旋律が現れる。ここはルイス・アルメンゴルらしいダンサ・クバーナ風で、劇的にヘ長調に転調したりしてロマンティック。更に6/8拍子のスケルツォが繰り返され、コーダではスケルツォが回想され終る。1985
- Soliloquio 独白
変ホ長調。冒頭の旋律はルイス・アルメンゴルが以前に作曲した〈Danae〉(Continuacion progresiva de las piezas infantiles, libro 2の第1曲に収載)に似ていて、優しい旋律の曲調。細やかな半音階進行を用いた和声が絶妙な響き。- Otro vals もう一つのワルツ
イ長調、A-B-A-コーダの形式。色々な曲想が現れる曲。ルイス・アルメンゴルの特徴的な醒めた和声が所々出てくる。1988
1988-1996
- Reflexiones (16 piezas para piano) レフレシオネス(ピアノのための16の作品)
Reflexionesは「熟考」とか「自省」という意味。それぞれ1分半から4分位の16曲から成る。各曲にはいろんな題名が付いているが、それらの題名について曲を作ったのではなく、むしろその題名の雰囲気の中での、ルイス・アルメンゴルの心の中を発露しているように思える。これらの曲の中で、彼は自分自身をじっくりと見つめているのかも知れない。大体が落ち着いた曲で内省的だが、美しい曲が多い。
- 第1番
1番というだけで題名はなし。ハ長調。夕暮れを見ながら物思いに耽るような感じの曲に思えます。前半は四声の旋律がゆったりと奏され、後半はff maestosoに向かって盛り上がり、情熱的な旋律のサビの部分は素敵です!。- Mágico 魔法
ホ長調。最初の部分は右手分散和音・左手音階の16分音符で魔法がかけられていくような幻想的な雰囲気で独特の美しさ。後半は落ち着いた雰囲気のモチーフが繰り返される。ドビュッシーの初期の作品の影響を感じます。- Reminiscencia 追憶
ハ長調、A-B-A-コーダの形式。両手アルペジオの連続が川の流れのような爽やかな響きで美しい。途中で変ロ長調に一時転調する所も色彩的だ。Bは変ホ長調、レントになり、可憐な旋律が奏される。- Jardín de música 音楽の庭
変ニ長調、A-A'-B-A-コーダの形式。可憐な旋律の曲。Bは変ロ長調になり、半音階を用いた和声進行が絶妙。- Un azul amanecer 青い夜明け
ニ長調、A-B-C-A-D形式。印象主義和声を多用した神秘的な曲。AとBは旋律らしきものは僅かで、絶妙な和声進行が何とも言えぬ静謐な雰囲気を醸し出している。Cはイ長調になり、醒めた感じの旋律が奏される。- Destellos de luna 月の煌めき
イ長調、A-B-A'-B'形式。澄み切った夜の静寂に物思うような感じの曲。この曲も絶妙な和声進行が見事。- Sentimental センチメンタル
ヘ短調、A-B-A'-コーダの形式。感傷的な思いを心に秘めたような曲で、何とも美しい。Bは数小節毎に転調するのが色彩的な響き。- Vespertina 夕暮れ
ト長調、A-B-A'の形式。夕暮れに霊感を得たピアノ曲は古今東西たくさんあるが、ルイス・アルメンゴルのこの曲はえも言われぬ哀愁が漂う。左手の伴奏の和音が毎拍変化していくのが、夕暮れの光の色が刻々と変る様を描いているよう。Bは変ホ長調になり、対旋律や伴奏和音の半音階進行が絶妙な美しさだ。- Emotiva 感情的
ホ長調、A-B-A-コーダの形式。メロディックな主題が現れる。Bはホ短調になり、16分音符のパッセージはルイス・アルメンゴル独特のクールな和音だ。- Romántica ロマンチックな
変ロ長調、A-B-A'の形式。落ち着いたちょっと寂しい曲。- Poética 詩的な
ハ短調、A-B-A'の形式。切ない旋律が静かに奏され、ひとしきり盛り上がる。続くBは変イ長調になり、流れるようなアルペジオにのって旋律が現れるが、やがて Maestosoと記された両手のオクターブが荘厳に奏される。- Preludio a un ocaso 落日へのプレリュード
やや和声が難解な、霧のかかったような曲。- Fragancias 芳香
一応変ロ長調。旋律は可憐だが、和音が複雑で大人びている。- Nubes de colores 色のある雲
ハ長調。アルメンゴルらしい爽やかな曲。- Ecos de la montaña 山のこだま
ニ長調。素朴な旋律に醒めた和声の曲。- Remembranzas 思い出
アルペジオの曲で、和声は難解。1990
- Vals impromptu 即興的なワルツ
ニ長調、A-B-A-コーダの形式。旋律も和音進行も自由に彷徨うような感じの曲。Aは爽やかなワルツが奏される。Bはニ短調に始まり、ホ短調に転調すると力強いワルツになる。- Capricho カプリーチョ
題名通りいろいろな曲想が現れる。やはりちょっと和音が難解で・・・。1993
1993-
- Miniaturas ミニアチュール集
1993年より書き始められた《ミニアチュール集》は晩年のアルメンゴルのピアノ曲の中心を成す作品群で、なんと95番まで作られている。80歳を超えてルイス・アルメンゴルは新たに不協和音の響きに魅せられたのか、次々と挑戦的な作曲の試みを続けていた。特に第22番以降は、多調主義(大雑把に言えば右手と左手で違う調を弾く)による曲が大部分を占めてくる。正直言って和声的に難しく、ダンサ・クバーナ集などで聴かれた親しみ易い雰囲気からは大きく離れてしまっていて、取っ付き難い曲が多い。晩年の彼は不協和音や多調主義に夢中になっていたようである。1999
2001
作曲年代不詳
- Mazurca マズルカ
イ短調、A-B-A-C-A形式。伴奏和音の半音階進行が特徴的。Bは増三和音の多用でくすんだ響き。Cはハ短調になる。- Crepuscular (para piano a cuatro manos) たそがれ(ピアノ連弾)
ハ長調。黄昏時を描写したような、仄かな哀愁が漂う曲。プリモとセコンド交互に旋律が現れる。- De ti, de mí (para piano a cuatro manos) あなたから、私から(ピアノ連弾)
ニ短調。切ない気持ちを歌ったような旋律の曲。- Danza española (para piano a cuatro manos) スペイン舞曲(ピアノ連弾)
ニ短調。アンダルシア風の旋法や、こぶしのような3連符、朗唱するようなレシタティーヴォ風などスペイン情緒たっぷりの曲。