Luis Gianneoのピアノ曲リスト
斜字は出版もされず、手稿譜も現存していない(要は存在が現在確認できない)作品です。
1913
1913 ó 1919?
1916
1916-1917
- Cuatro Composiciones 4つの作品
- Vieja canción (1916) 古い歌
- Berceuse (1916) 子守歌
- Arabesca (1917) アラベスク
- En bateau (1917) 小舟にて
- Dos minués 2つのメヌエット
1917
- Canción exótica 異国の歌
- Vals Lento (1917 ó 1923?) ゆっくりしたワルツ
- Sonata No. 1 (Pequeña sonata) ソナタ1番(小さなソナタ)
- Allegro moderato
- Andantino
- Allegro agitato
- Te amo 君を愛す
1918
1927?-1932
- Preludios criollos クリオージョの前奏曲集
- Nocturno (1923または1927?) 夜想曲
- En el desfiladero 山峡の小道にて
- En el altiplano (1932?) アルティプラノにて
- En el cañaveral (1928?) さとうきび畑にて
- Noche en la sierra (1927?) 山の夜
1928
- Invocación 祈願
- ¿Por que? なぜ?
1931
1933
- Dos estudios 2つの練習曲集
- Con tema de vidala ビダーラの主題で
- Con tema de zamba サンバの主題で
- Suite 組曲
- Agitato
- Calmo
- Allegro rustico
1938
- Sonatina ソナチネ
- Allegro
- Tempo di minuetto un poco mosso
- Allegro vivo
- Cinq petites pièces / Cinco pequeñas piezas 5つの小品集
- Coquetterie / Requiebros おしゃれに
- Chanson à bercer / Canción de cuna 子守歌
- Marche des petites soldats / Marcha para soldaditos de cuerda おもちゃの兵隊の行進
- Valse sentimentale / Vals sentimental センチメンタルなワルツ
- Mouvement perpétuel / Movimiento perpetuo 無窮動
1939
- Tres danzas argentinas 3つのアルゼンチン舞曲
- Gato ガト
- Tango タンゴ
- Chacarera チャカレーラ
1939-1941
- Música para niños 子供のための音楽
- Prelude y Fuga 前奏曲とフーガ
- El juglar 手品師
- Zapateado サパテアード
- Vidalita ビダリータ
- Quenas ケーナ
- Pericón ペリコン
- La morochita ラ・モロチータ(小麦色の少女)
- Aire popular 民謡
- Arrorró indígena インディヘナの子守歌
- Bailecito cantado バイレシートの歌
1943
- Sonata No. 2 ソナタ2番
- Allegro
- Romanza
- Allegro molto
1946
- Siete piezas infantiles 7つの子供の作品集
- Ronda ロンダ
- Canción de cuna 子守歌
- Atardecer pampeano パンパの夕暮れ
- El sombrerito 小さなソンブレロ
- Tango タンゴ
- Tamboril 小太鼓
- Danza campesina 田舎の踊り
- Villancico クリスマス・キャロル
- Caminito de Belén ベツレヘムへの小道
1948
1953
- Preámbulo, Fuga y Epílogo 序奏とフーガ、終曲
1956-1957
- Sonata No. 3 ソナタ3番
- Allegro impetuoso
- Adagio sostenuto
- Allegro deciso
1957-1959
- Seis Bagatelas 6つのバガテル
- Allegretto
- Allegro
- Andantino piacevole
- Allegro scherzando
- Andante
- Vivo
Luis Gianneoのピアノ曲の解説
1913
1913 ó 1919?
- Mi changuita (tango) 私の小さな子ども
作曲年は資料により1913年または1919年と異なる。この頃Gianneoはクラシックの作曲家と平行していくつかのタンゴなどポピュラー曲も作っていて、 その際はLuis Arielというペンネームで作品を発表していたらしい。このMi changuitaもそういった作品の一つで、書法は当時のよくあるタンゴの楽譜のスタイル通りの、左手のブンチャンチャンチャンの伴奏に右手のオクターブの旋律と分かりやすい曲。ホ短調、A-B-A-B形式。せっかくタンゴを作る歌心があったのなら、もっと高度な技法で“本格的な”ピアノのためのタンゴを作曲して欲しかったな~。1916
1916-1917
- Cuatro Composiciones 4つの作品
ロマン派の和声にちょっとフランス風味が加わった感じの抒情的な曲集である。和声など後に現れるGianneoらしい鋭いものはまだ見られず、のほほんとした曲ばかりだが、わたくし個人的にはこういう分かりやすい曲は好きです。
- Vieja canción (1916) 古い歌
変ホ長調、A-A'-A"-コーダの形式。優しい8分音符のアルペジオの伴奏にのって昔話がゆったりと語られているような曲。- Berceuse (1916) 子守歌
ヘ長調、A-B-A'形式。揺りかごを思わせる左手のシンコペーションの伴奏にのって優しい旋律が歌われる。Bはニ短調になってfまで盛り上がる。- Arabesca (1917) アラベスク
ニ長調、A-B-A'形式。ドビュッシーの初期の作品を思わせる曲で、左手の2オクターブ半の16分音符のアルペジオにのって右手の旋律が朗々と歌われる。Bはト長調になり、全音音階が多用される。再現部A'で右手の旋律に加え対旋律が現れる所など、ドビュッシーの小組曲第1番にそっくり。- En bateau (1917) 小舟にて
嬰ヘ長調、A-B-A'形式。波のような両手にまたがるアルペジオにのって爽やかな旋律が歌われる。ほのぼのとした和音が美しい。1917
- Vals Lento (1917 ó 1923?) ゆっくりしたワルツ
作曲年は資料により1917年または1923年と異なる。変ト長調、A-B-A'-C-A"形式。冒頭の気怠い雰囲気のワルツは、ドビュッシーの「レントより遅く」を連想させる。変ホ短調で始まるBと、ニ長調で始まるCは活気が出てきて、シューマンの謝肉祭を思わせる。- Sonata No. 1 (Pequeña sonata) ソナタ1番(小さなソナタ)
資料によっては、この作品を "Pequeña sonata" としているものもある。ロマン派の香りの強いソナタ。第一楽章Allegro moderatoはソナタ形式で、嬰ハ短調の第1主題はメンデルスゾーンっぽい。ホ長調の第2主題は優しい旋律。展開部は主に第1主題が変奏されていく。再現部は第1主題、嬰ハ長調の第2主題と奏される。第二楽章Andantinoはホ長調の牧歌的な旋律で始まる。中間部では左手の16分音符がうねり、ちょっと情熱的。第三楽章Allegro agitatoはソナタ形式。嬰ハ短調の第1主題は高音部ユニゾンの16分音符が激情的、一方ホ長調の第2主題は中音部の穏やかな旋律。展開部は初めは第1主題が、後に第2主題が変奏されていく。再現部の第2主題は嬰ハ長調になって終わる。
- Allegro moderato
- Andantino
- Allegro agitato
- Te amo 君を愛す
変ロ長調、A-A'形式。後に妻となるMaria Josefina Ghidoniに捧げた綿々たる愛の歌。 ただ、愛を囁くには左手の和音連打が重々しく、うっとうしいかな~、と私が思うのはジェネレーションギャップかしら?。1918
- Variaciones sobre un Tema de Händel ヘンデルの主題による変奏曲
ブラームスのピアノ曲に「ヘンデルの主題による変奏曲とフーガ、作品24」があり、Gianneoはブラームスのこの曲を参考にしたのだろうと推測されるような作品である。Gianneoは、ヘンデルのメサイアのアリアから採った主題を用いて、9つの変奏とフーガを作った。変ロ長調の主題に引き続き、変奏Iー両手のスケールが華やか、変奏IIー変ロ短調で静か、変奏IIIー華やかな付点の曲、変奏IVー16分音符の急速な曲、変奏Vー両手のユニゾンが力強い、変奏VIー変ロ短調になり両手オクターブ二声が対位法的、変奏VIIー落ち着いた感じ、変奏VIIIー3連符の伴奏にのって抒情的な旋律が歌われる、変奏IXー左手のアルペジオに繋がったレシタティーボ風の旋律がバロック調、最後のフーガは演奏時間約3分で派手に盛り上がって終わる。1927?-1932
- Preludios criollos クリオージョの前奏曲集
この組曲は未出版で、Ediciones Culturales Argentinas刊の "Luis Gianneo" (1980)のカタログに従い組曲 "Preludios criollos(クリオージョの前奏曲集)" と分類したが、Marco PoloのCDでは1、4、5曲がTres preludiosととして纏められている。全体的に各曲にストーリーを感じさせる構成感があり、詩的で、表現力も豊かで、和声も魅惑的で、Gianneoのピアノ曲中でも最高傑作に思えるのだが全く楽譜が出版されていないのは残念。第1曲Nocturno(夜想曲)は神秘的な和音で始まる。その後、ギターが鳴らすような感じのHuellaのリズムにのって旋律が長調になったり短調になったり現れる。夢の中で幻の踊りを見たかのような曲。第2曲En el desfiladero(山峡の小道にて)は楽譜が失われており、どういう曲だったのか不明である。第3曲En el altiplano(アルティプラノにて)は、9分の大曲。アルティプラノとはペルー南部からボリビア、チリ、アルゼンチン北部にまたがるアンデス山脈中の高原のことである。鐘が鳴り渡るような荘厳な音楽が段々盛り上がっては、また徐々に消えていく。第4曲En el cañaveral(さとうきび畑にて)はホ長調で、風が吹き抜けていくようなアルペジオが爽やかな曲で、段々アルペジオが技巧的に華やかになる。最後は静かになり、高音部に自作の交響詩 "El tarco en flor" で使われる3連符の旋律が現れるところは幻想的。第5曲Noche en la sierra(山の夜)は3部から成る曲で、演奏時間も約7分あり、ムゾルグスキーの「はげ山の一夜」を連想させるようなストーリーを感じさせる曲。最初は静かに続くアルペジオにのって静かに語るような民謡風の旋律が現れ、徐々に盛り上がる。中間部は活発な踊りのようで、ペンタトニックの旋律がアルゼンチン北部の民謡っぽい。ここは伴奏も技巧的でアルベニスの書法を思わせる。そしてまた静かな冒頭の旋律が再現され、曲は消えるように終わる。
- Nocturno (1923 ó 1927?) 夜想曲
- En el desfiladero 山峡の小道にて
- En el altiplano (1932?) アルティプラノにて
- En el cañaveral (1928?) さとうきび畑にて
- Noche en la sierra (1927?) 山の夜
1928
- ¿Por que? なぜ?
この曲はCanción (1916)、Te amo (1917) と共にAlbum Intimo(親密なアルバム)として纏められたとのこと。ト長調、A-A形式。静かで控えめなワルツ。左手の和音の半音階的進行がとても繊細にできている。1931
- Bailecito バイレシート
イ短調。バイレシートはアルゼンチン北部あたりが発祥の民族舞踊。アルゼンチンの作曲家の多くが「バイレシート」という題名で作曲しているが、Gianneoのこの曲は冒頭の左手の和音がラ-ミ-ソ-ラ-ド、とソが入っている所から素朴な雰囲気を醸し出している。甘い和音もなく、野生的な響きの曲で僅か2分少々の小品だが、Gianneoらしい新しいスタイルを感じさせる傑作。楽譜を見ていると書法がややプロコフィエフ風かな。1933
- Dos estudios 2つの練習曲集
練習曲と銘打つだけあり、技巧的な作品。
- Con tema de vidala ビダーラの主題で
ビダーラとは、先住民の音楽を起源とするアルゼンチン北部の民謡。旋律こそ3拍子のビダーラだがそれに纏わリつく嵐のような5連16分音符のアルペジオが技巧的。- Con tema de zamba サンバの主題で
静かな旋律とスタッカートの速いパッセージが交互に現れる。- Suite 組曲
アルゼンチン民謡と近代的な作曲技法がうまくマッチした、聴いていて面白い組曲である。
- Agitato
イ短調、6/8拍子の軽快な曲で、冒頭の8小節の旋律が調を変えあちこちに現れる。新古典主義的な響きの曲。- Calmo
ヘ長調、中音部に和音で奏される旋律はYaravi風の落ち着いた歌のようで美しく、高音の16分音符の繊細なオブリガートは夜空に星が煌めくよう。- Allegro rustico
イ短調(又はヘ長調)、チャカレーラ風の活気ある野性的な曲で、特に最後のカデンツァ風のアルペジオなど、技巧的で派手な盛り上がり!。1938
- Sonatina ソナチネ
Gianneoのヨーロッパ留学中の作品。全体的に新古典主義の作りながら、リズムにも和声にもアルゼンチンらしさが加わって、Gianneoの「新民族主義」とでも呼んだらいいような曲。ピアニストのクラウディオ・アラウに献呈されている(この巨匠は実際この曲を弾いたのかな?)。第1楽章AllegroはA-B-A'形式。7小節目から現れるシンコペーションが特徴的なカンドンベ(ウルグアイなどでの黒人の踊り)のリズムの曲。第2楽章Tempo di minuetto un poco mossoもA-B-A'形式。ゆったりとした上品なメヌエットだが、冒頭のミ-ラ-レ-ソなど、旋律や伴奏に完全四度が多用されているところはギターの響きを思わせ独特。第3楽章Allegro vivoはロンド形式。チャカレーラのリズムにのって、ドのリディア旋法で軽快な旋律が奏される。
- Allegro
- Tempo di minuetto un poco mosso
- Allegro vivo
- Cinq petites pièces / Cinco pequeñas piezas 5つの小品集
1938年6月にパリで作曲された。パリのMax Eschig社より出版されたため、楽譜には上記のようにフランス語/スペイン語の題名が併記されている。各曲はその親しみやすい題名とは裏腹に、長調だか短調だかがハッキリしない、何となく不安気な雰囲気に満ちている。Gianneoの作風ともとれるし、当時留学中のGianneoの目に写った第二次世界大戦直前のヨーロッパが、この作品に影を落としているといったら勘ぐり過ぎであろうか。
- Coquetterie / Requiebros おしゃれに
カンドンベのリズムが快活な曲。右手がト長調~左手がロ短調、右手がニ長調~左手が嬰ヘ短調、と属調の平行調の関係にあるのをぶつけているのが面白い。- Chanson à bercer / Canción de cuna 子守歌
A-B-A形式。ファ#-レ-ミ-ラというニ長調の響きの伴奏にのってニ短調の悲しい調べが歌われる。少しプ-ランクを思わせる雰囲気の曲。- Marche des petites soldats / Marcha para soldaditos de cuerda おもちゃの兵隊の行進
A-B-A'形式。調性が定まらず、多調の響きも現れたりと滑稽な響きが、おもちゃの兵隊らしい雰囲気の曲。- Valse sentimentale / Vals sentimental センチメンタルなワルツ
A-B-A形式。強いて言えばイ短調だが、臨時記号を多用した旋律が不安気な曲。- Mouvement perpétuel / Movimiento perpetuo 無窮動
右手の16分音符が殆ど途切れず続くトッカータ風の曲。1939
- Tres danzas argentinas 3つのアルゼンチン舞曲
Gianneoがヨーロッパ留学を終えて、アルゼンチンのトゥクマンに戻って間もなく作曲された。この曲集はGianneoのピアノ曲の中でも最も民族主義的な作品の一つ、とは言え不協和音、多調の使用による複雑な響きの曲と成っている。
- Gato ガト
一応ト長調、A-A'-B-B'-A"形式。Aは民族舞踊Gatoの "Zapateo" と "Zarandeo" にそれぞれ相応する、ffの低音が荒々しい部分と、静かで可憐な部分が交互に現れるー後者では右手がト長調で左手がト短調と多調だ。- Tango タンゴ
一応変ロ長調、A-B-A'形式。多調になったり、旋律が長九度重音と奏されたりと、独特の雰囲気を出している。- Chacarera チャカレーラ
一応ニ長調。左手の8分音符は楽譜に "quasi martellato" とあるように叩くように弾かれ、右手のシンコペーションの旋律は勇壮ながらミが♭だったりソが♯になったりと不思議な響き。1939-1941
- Música para niños 子供のための音楽
10曲から成る組曲。1941年10月6日のGrupo Renovación第49回演奏会での、この組曲の初演時プログラムでは、最初のPrelude y Fuguaは第1番Prelude、第2番Fuguaと別の曲で、第3曲がEl juglarと続き、第10曲Arrorró indígenaで終っていたが 出版時にBailecito cantadoが加えられたとのこと。大体の曲はアルゼンチンの民謡の調べをシンプルな形で音にしていて、大部分の右手の旋律は単音、左手の伴奏または対旋律も単音で書かれていて技巧的にも初心者向けだが、その少ない音から和声的にも豊潤な響きを感じさせる作曲技法はさすが一流の作曲家らしい。
- Prelude y Fuga 前奏曲とフーガ
Preludeは一応ト長調。バッハの平均率1番の音型を上下逆にしたようなアルペジオの曲だが、和音は凝っている。Fugaは2声で、チャカレーラのリズムで右手にト短調の主唱が現れ、次に左手にニ短調の応唱が奏される。- El juglar 手品師
イ短調、A-B-A'形式。左手スタッカートの軽快な伴奏にのって、右手高音に芸人が手品をしているような滑稽な旋律が奏される。- Zapateado サパテアード
ニ長調、A-B-A-B-A'形式。マランボのようなリズムの快活な曲で、右手の明るい旋律に左手の対旋律が絡む。- Vidalita ビダリータ
ト短調。アルゼンチンの民謡ビダリータのリズムによる4小節の物悲しい旋律が、伴奏を変えながら6回繰り返される。- Quenas ケーナ
A-B-A'形式。一応変ト長調だが、ペンタトニックの高音の旋律は正にケーナの調べのよう。Bは3/8拍子の低音の太鼓の音が挟まれ、踊りが始まったような雰囲気。- Pericón ペリコン
イ長調、A-B-A-コーダの形式。ペリコンとはアルゼンチン・ウルグアイの古い民族舞踊のこと。曲は田舎の踊りの雰囲気。- La morochita ラ・モロチータ(小麦色の少女)
ウルグアイの作曲家Enrique Saboridoが1905年に作曲した "La morocha(小麦色の娘)" というタンゴの編曲。変ロ短調、A-B-A'形式。旋律はGianneoらしく全音音階を使ったりと捻られている。- Aire popular 民謡
ハ長調、A-A'-A"形式。右手16分音符アルペジオの下で、カンドンベのリズムの旋律が奏される元気な曲。- Arrorró indígena インディヘナの子守歌
ト短調、A-B-A形式。Aはビダリータのリズムの左手伴奏にのって、物悲しい旋律が静かに奏される。旋律は時々ドリア旋法になる所が趣深い。- Bailecito cantado バイレシートの歌
ト長調、A-B-A'形式。ギターを思わせるスタッカートの伴奏にのって爽やかなな旋律が奏される。1943
- Sonata No. 2 ソナタ2番
娘のCelia Rosauraに献呈され、彼女が1945年に初演した。第1楽章Allegroは、プロコフィエフのピアノソナタを思わせる不安げな響き。第2楽章Romanzaは、子守歌のような感じだが、冒頭の旋律は五音音階で、伴奏の醒めた和音が特徴的。第3楽章Allegro moltoは、チャカレーラ風で攻撃的なリズムの激しい曲。
- Allegro
- Romanza
- Allegro molto
1946
- Siete piezas infantiles 7つの子供の作品集
この組曲は1941年作曲のMúsica para niños同様、初心者向けの易しい曲集で、今回は和声も分り易い。
- Ronda ロンダ
A-B-A形式。4分音符アルペジオの左手伴奏にのって、あどけない旋律が奏される。一見ハ長調だが旋律は(ファが#になる)ドのリディア旋法だ。Bはファのリディア旋法になる。- Canción de cuna 子守歌
ト長調、A-B-A'形式。単旋律に伴奏もシンプル。Bはハ長調になる。- Atardecer pampeano パンパの夕暮れ
ハ長調、A-B-A'-B-A'形式。素朴な旋律に左手で和音を付けただけだが、その和音の音階的な動きがアルゼンチンの大平原の夕暮れの光の移ろいを描写しているようで美しい。- El sombrerito 小さなソンブレロ
ヘ長調、A-A-B-A'形式。明るい旋律で、ちょっとメキシコ風かな。アルゼンチン北部辺りにもこんな感じの民謡があるのかな。- Tango タンゴ
ハ短調、A-B-A-B-A-コーダの形式。タンゴというよりかは、速いミロンガである。- Tamboril 小太鼓
ハ長調、A-B-A形式。題名通り小太鼓を思わせる連打音の曲。- Danza campesina 田舎の踊り
ト長調、A-B-A-B'-A'形式。田舎風の陽気な3拍子のリズムで、アルゼンチン北部の民族舞踊のガトまたはエスコンディードであろう。- Villancico クリスマス・キャロル
1946年12月22日作曲。3拍子の左手の伴奏にのって呟くような素朴な旋律が歌われる。飾り気もないが、キリストの降誕を描いているかのような神秘的な曲。- Caminito de Belén ベツレヘムへの小道
1946年12月23日作曲。 右手のスタッカートの伴奏が愛嬌のある明るい曲。最後は静かに終わる。1948
- Improvisación 即興曲
この曲は、Gianneoがトゥクマンに20年間住んでいた頃に友としていた、ウルグアイ出身のヴァイオリニストのEnrique Mario Casella (1891-1948) を偲び作曲されたとのこと。左手のバスの音が音階を下がっていくのが何とも悲しい雰囲気の曲。1956-1957
- Sonata No. 3 ソナタ3番
このピアノソナタ3番は、後期のGianneoの作品らしい複雑な和声からなり、不安な雰囲気に満ちた作品である。第1楽章Allegro impetuosoは、ソ-シ-ミ-ソ-シ♭という速い上行音の第1主題、三度重音の旋律の第2主題をモチーフにした曲。第2楽章Adagio sostenutoはゆっくりした悲歌。第3楽章Allegro decisoはマランボのリズムによる速く激しい曲。
- Allegro impetuoso
- Adagio sostenuto
- Allegro deciso
1957-1959
- Seis Bagatelas 6つのバガテル
全6曲弾いても6分少々の短い小品集。自筆譜の冒頭には「5つのバガテル (Cinco bagatelas)」と記されているが、6曲ある。民族主義的な色合いは消え、そのかわり大部分が無調的で、難解な響きの音楽である。謎めいた1番、無調のトッカータ風の2番、七度のカノンで作られている3番、三声のフーガで作られている4番、十二音技法を一部用いた思索的な5番、シンコペーションがジャズ風の6番と続く。
- Allegretto (1957)
- Allegro (1957)
- Andantino piacevole (1958)
- Allegro scherzando (1958)
- Andante (1959)
- Vivo (1959)