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Hilario Gonzálezについて
イラリオ・ゴンサレス・イニゲス Hilario González Íñiguez は1920年1月24日、ハバナに生まれた。幼い時にシエンフエゴスに転居し同地の音楽学校で学び、またハバナに戻ってからはファルコン音楽院に通いピアノや作曲を学び、1936年に卒業した。その後はホセ・アルデボルに作曲を師事した。ホセ・アルデボルが1942年に「音楽刷新グループ Grupo de Renovación Musical」という作曲家グループを結成すると、その一員として活動した。
1947年、キューバの小説家・音楽評論家でこの頃ベネズエラに亡命していたアレホ・カルペンティエル Alejo Carpentier はイラリオ・ゴンサレスをベネズエラに招いた。後にイラリオ・ゴンサレス自身が「3週間の予定で行ったのが13年間になってしまった」語ったように、彼は1960年までベネズエラに滞在した。カラカスではVicente Emilio Sojoに作曲を師事した。また、ベネズエラ交響楽団を客演指揮するためにベネズエラを訪れたセルジュ・チェリビダッケに指揮を師事したこともあるらしい。また国立カラカス国民劇場の監督やベネズエラ合唱団の副指揮者を務めた。1960年にキューバに帰国してからはラジオやテレビの音楽番組の仕事や、1961年からはアマデオ・ロルダン音楽院ピアノ教授を務め、1971年にハバナに国立音楽博物館 Museo Nacional de la Música が開館すると研究者としてキューバ音楽の調査研究を行った。1980年に出版されたマヌエル・サウメルのピアノ曲《コントラダンサ集》の校訂などにも携わった。
1996年10月3日に亡くなった。
イラリオ・ゴンサレスの主な作品を記すと、劇場作品では、オペラ《開かれた扉 Las puertas abiertas》(1964-66)、ミニオペラ《バラのお靴 Los zapaticos de rosa》、バレー音楽《夜明け前 Antes del Alba》(1945)などがある。管弦楽曲では、声と管弦楽のための《キューバ歌曲の組曲 Suite de canciones cubanas》(1943)、《ピアノ協奏曲》、《エルネスト・ゲバラの栄光のための葬儀の花輪 Corona fúnebre a la gloria de Ernesto Guevara》(1968)、など。室内楽曲では、《オーボエ、ファゴット、ヴィオラ、ピアノのためのコンチェルティーノ》(1944)、《ヴァイオリンソナタ》(1957)、《弦楽四重奏曲》(1959) などを作曲した。またホセ・マルティの詩による歌曲を多数作った。
イラリオ・ゴンサレスのピアノ曲は20歳前後に作曲した作品が主である。若くして高度な不協和音を駆使し、それにキューバ民族音楽を融合したピアノ曲からは彼の作曲技法の高さが窺える。惜しむらくは、更に一歩進んだ「キューバ民族主義のピアノ曲の大作」なんて作品が残されなかったことかな、と思います。
Hilario Gonzálezのピアノ曲リストとその解説
1938
- Dos danzas (Dos danzas afrocubanas), Op. 2 2つの舞曲集(2つのアフロ=キューバ舞曲集)、作品2
アフロ=キューバ音楽の奥深い所を突いたような組曲で、「耳に心地良い南国キューバの甘い響き」などといったものを完全に排した不協和音の響きからは、弱冠18歳でこの曲を書いたゴンサレスの作曲家としての早成さを思わせます。
- Danza de la negra triste 黒人の哀しい舞曲
殆ど調性のない曲。冒頭4小節で、増八度重音が半音階を上がったり下がったりするモチーフが陰うつな雰囲気だ。12小節目からダンサのリズムが和音でゆっくりと刻まれるが、これも増八度や増五度を含む和音でちょっと不気味。このリズムにのって冒頭のモチーフが旋律となって奏され、徐々に音域を広げffまで盛り上がるが、またダンサのリズムのみとなって消えるようにデクレッシェンドする。- Fiesta en e' solar 太陽の祭り
一応嬰ニ短調。祭りの始まりの合図のような6/8拍子のモチーフと、2/4拍子の踊りのリズムが前奏のように奏される。続いて6/8拍子の荘厳な儀式のような音楽が流れ、次に2/4拍子の踊りにのって旋律が奏される。- Tres preludios en conga 3つのコンガ形式の前奏曲集
コンガとは一般的に、キューバの民族楽器である縦長の太鼓を指すことが多いが、キューバでは元々コンパルサと呼ばれるカーニバルの楽団やその音楽・踊りを意味している。上記の《2つの舞曲集(2つのアフロ=キューバ舞曲集)》同様に不協和音の使い方が絶妙で、また3曲ともコンパルサの光景を思わせる活発な曲想のため、何とも引き締まった響きの組曲である。
- No. 1
前奏に引き続き、長調とも短調ともつかない旋律が現れ、それを繰り返しつつ徐々に音量を増して盛り上がる。- No. 2
鐘が鳴るような前奏は、レクオーナ作曲の《アフロ=キューバ舞曲集 - 真夜中のコンガ》の冒頭に似ている。続いて現れる旋律は一応ト長調だが、伴奏にラ♭やシ♭が混じって長調とも短調ともつかない響きが独特だ(下記の楽譜)。
Tres preludios en conga, No. 1、8-15小節、Editora Musical de Cubaより引用- No. 3
冒頭はシンコペーションが効いたリズムが高音から降ってくるように奏される。和音は右手はヘ長調 I 度だが、左手はド-ラ♭やシ-ソで多調の鋭い響きだ(下記の楽譜)。
Tres preludios en conga, No. 3、1-3小節、Editora Musical de Cubaより引用
続いてもう一つのリズムが急き立てられるように繰り返され(下記の楽譜)、この2つのリズムが交互に現れては徐々に盛り上がってカオスの世界さながらと成る。
Tres preludios en conga, No. 3、12-14小節、Editora Musical de Cubaより引用1941
- Pequeña suite 小品集
1942
- Primera sonata, Op. 8 ソナタ第1番、作品8
- Lento - Allegro moderato
ソナタ形式と思われます。レシタティーボ風の前奏に続いて、第1楽章全体を通して弾かれるリズムー2/4拍子(3連8分音符6つ)+3/8拍子(16分音符2つ+8分音符2つ)の交互繰り返しーが現れ、このリズムの上で11小節目から右手オクターブで奏される無調の旋律が第1主題であろう(下記の楽譜)。31小節目から新たな旋律が長七度または短七度の重音で現れ、これが第2主題のようだ。第1主題がもう一度現れて一段落してからが展開部で、右手が主に第2主題の変形である一方、左手リズムに紛れる形で第1主題の断片がオクターブで現れる。再現部は第2主題が提示部の時より完全四度上で再現され、最後に第1主題が再現されて終わる。
Primera sonata, Op. 8、8-15小節、Editora Musical de Cubaより引用- Moderato cantabile
もの寂しい和音が続く中、2つの旋律が交互に奏されながら変奏される。- Presto
一応イ短調。急速な8分3連符と同音連打が特徴的なモチーフが繰り返され、その間にアンダンテの滑稽な経過句が挟まれる。1950 (1953?)
- Tres danzas en canon para dos pianos, Op. 20 2台ピアノのための3つのカノン形式の舞曲集、作品20
- Minué de corte (canon al unísono) 宮廷のメヌエット(ユニゾンのカノン)
- Contradanza de figuras (canon a la octava) 音形のコントラダンサ(オクターブのカノン)
- Danza colonial (canon a la quinta) コロニアル様式の舞曲(五度のカノン)
1951
- Novelette ノヴェレッテ
1964
- Jugando al son ソン風の遊び
Hilario Gonzálezのピアノ曲楽譜
Editora Musical de Cuba
- Tres preludios en conga
- Dos danzas, Op. 2
- Primera sonata, Op. 8
Elkan-Vogel Co., Inc.
- Six Modern Cuban Composers
- De "Tres preludios en conga" (Nº 3) - 実際は第3番でなく第2番を収載しています。
斜字は絶版と思われる楽譜
Hilario Gonzálezのピアノ曲CD
星の数は、は是非お薦めのCD、は興味を持たれた人にはお薦めのCD、はどうしてもという人にお薦めのCDです。
Renovación musical. Hilario González
Producciones Colibrí, CD 196
- Primera sonata, Op. 8 - 1942
- Tres preludios en conga - 1938
- Dos danzas afrocubanas, Op. 2 - 1938
- Primera suite de canciones (Textos de Emilio Ballagas) - 1940
- Guajiras en sol (Textos de Emilio Ballagas) - 1945
Victor Diaz Hurtado (pf), Gessliam Suarez Molina (Soprano)
2010年のリリース。
CUBA PIANO
Ensayo, ENY-CD-9722
- No bailes más! (Ignacio Cervantes)
- Adiós a Cuba (Ignacio Cervantes)
- La encantadora (Ignacio Cervantes)
- La celosa (Ignacio Cervantes)
- Ombre et mystère (Nicolas Ruiz Espadero)
- Danza Lucumí (Ernesto Lecuona)
- Danzade los ñáñigos (Ernesto Lecuona)
- Caprice (O, Ma Charmante, épargnez-moi!) (Louis Moreau Gottschalk)
- Canción de cuna del niño negro (Amadeo Roldán)
- Soledad (Ignacio Cervantes)
- El velorio (Ignacio Cervantes)
- No me toques (Ignacio Cervantes)
- La Carcajada (Ignacio Cervantes)
- Canción del guajiro (Nicolas Ruiz Espadero)
- A la Antigua (Ernesto Lecuona)
- Interrumpida (Ernesto Lecuona)
- Ella y yo (Ernesto Lecuona)
- La Mulata (Ernesto Lecuona)
- Preludio en conga No. 3 (Hilario González)
- Berceuse campesina (Alejandro García Caturla)
- Ahí viene el chino (Ernesto Lecuona)
- La Comparsa (Ernesto Lecuona)
- Alegre (René Touzet)
- Cervantina (René Touzet)
- Recordando Al Maestro (René Touzet)
Luiz de Moura Castro (pf)
1991年の録音。
Rusia ante la rítmica cubana
- La Valentina (Tomás Buelta Flores)
- La que a ti te gusta (Enrique Guerrero)
- Palmas reales rubias (César Pérez Sentenat)
- Mulato (Amadéo Roldán Gardes)
- Comparsa (Alejandro García Caturla)
- Danzón (José Ardévol Gimbernat)
- Preludio No. 6 de Seis preludios (Edgardo Martín Cantero)
- Guajira (Harold Gramatges)
- Invención No. 3 (Argeliers León Pérez)
- Danza de la negra triste (Hilario González Íñiguez)
- Preludio No.3 "Motivos de danza" (Nilo Rodríguez Suárez)
- Toque (Alfredo Diez Nieto)
- Zapateo cubano (Héctor Angulo)
- Cuento sonoro (Roberto Valera)
- Boceto No. 4 "Acosta León" (Leo Brouwer)
- Toque (Guido López-Gavilán)
- Archivos de la memoria (Jorge López Marín)
- Y el brillo de la luna te encantaba (Juan Piñera)
- ¡Qué confusión de tonos! (Andrés Alén)
- Habanera del Ángel (José María Vitier)
- Niña con violín (Ernán López-Nussa)
- Pan con "Timba" (Aldo López-Gavilán)
- Scherzo, Op. 10 (Cecilia Arizti)
- Mazurka en glissando (Ernesto Lecuona)
2014年のライブ録音。
Hilario Gonzálezに関する参考文献
- Yurima Blanco. Impronta del compositor cubano Hilario González en la cultura venezolana (1947-1960). Boletín Música No. 50 2018.